etc.ロマンス

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あらすじ


 梅雨時の六月、高校二年生の宮島葵は忘れ物を取りに放課後の学校へ戻ろうとしたところで突如として異世界に召喚されてしまった。気がつけば二月に照らされた雪原に佇んでいた葵はそこで、ユアン=S=フロックハートという名の少年と、彼の家庭教師だというレイチェル=アロースミスという名の女性に出会う。葵を二月の浮かぶ異世界へ招いたのはユアンだったのだが、それは彼にとっても不可抗力的な事態で、葵は元の世界へ帰れなくなってしまった。

 元の世界へ帰れる方法が見付かるまで魔法が存在する異世界で生活することになった葵はユアンとレイチェルに強く勧められたため、一人暮らしを始めると同時に学校へ通うことになった。その学校の名は、トリニスタン魔法学園。魔法を学ぶ者が集う特殊な環境に身を置くことになった葵は、そこでレイチェルの弟だというアルヴァ=アロースミスと出会う。自室以外ではネコをかぶっているアルヴァに『お嬢様』としての振る舞いを叩き込まれた葵は自分を偽りながら学園生活をスタートさせたのだった。

 本当の自分を曝け出すことが出来ないため友達もつくれないまま学園生活を送っていた葵は、ふとしたことから学園のエリート集団であるマジスターと関わりを持ってしまった。このことが女子の妬みを買ってしまい、全校女子生徒を敵に回した葵は孤立してしまう。初めは陰口から始まったイジメは日毎にエスカレートしていき、耐えられなくなった葵はトリニスタン魔法学園を辞めることをアルヴァに申し出た。しかし一度は辞めると決めたものの、マジスターの一人であるハル=ヒューイットへの恋心を自覚してしまった葵はなしくずし的に学園に留まってしまう。だがこの決断は悪い方ばかりへは転ばず、トリニスタン魔法学園に留まった葵はそこで初めての同性の友達を得たのだった。

 二月の浮かぶ異世界で葵が初めて得た友人の名は、ステラ=カーティス。マジスターの一員でありながら他の人たちとは毛色が違うステラは、葵が好意を抱くハルの想い人だった。ハルのこともステラのことも好きという状態で感情の板挟みに苦しんでいた葵は創立祭の夜、ハルがステラに想いを告げている場面に出くわしてしまう。この一件でステラと顔を合わせ辛くなってしまった葵は彼女を避けてしまったのだが、そうこうしているうちにステラが学園を去ることが決まってしまった。夢に向かって走り出したステラを追ってハルまでもが学園を去ってしまったため、複雑な思いを残したままの別れを経験した葵は二月の浮かぶ夜空に叫び声を放ちながら帰路を疾走したのだった。






 友人達との別れを経験し、なかなか気分を立て直すことが出来ずにいた葵の前に、ある日突如としてメイド服を身に纏った少女が姿を現した。魔法生物だというワニに似た生物を連れて現れた少女の名は、クレア=ブルームフィールド。彼女は見た目通りのメイドで、葵の世話をするためにやって来たのだという。自分で使用人の手配をした覚えがない葵はクレアが誰の命を受けてやって来たのか訝しく思いつつも、彼女との主従生活をスタートさせることになってしまった。

 メイドがやって来たことで、一人暮らしにしては広すぎる屋敷で暮らしていた葵の生活は一変した。しかし変化はそれだけではなく、葵の通うトリニスタン魔法学園アステルダム分校でも大きな異変が起こっていた。学園内では唯一の理解者だったアルヴァと連絡が取れなくなってしまったのである。口うるさいところはあるものの何だかんだと助けてくれていたアルヴァの不在は葵にとって痛手だった。しかし新たに赴任してきた担任教師、ロバート=エーメリーが色々と配慮をしてくれたおかげで事なきを得る。事あるごとに庇ってくれるロバートに、葵は次第に心を傾けていった。

 葵が理想の教師だと思っていたロバートは、実はただの好色家だった。それも行方をくらませていたアルヴァの知り合いで、彼らがタッグを組んで悪巧みをしていたことを知ってしまった葵は感情に任せてトリニスタン魔法学園を飛び出す。しかし家に帰ろうとしたところでふと、誰の命令でやって来たのかも分からないクレアがアルヴァ達とぐるだったのではという考えが浮かんできてしまった。そのため家にも帰れなくなってしまった葵はパンテノンという街で出会い、親交を深めていた庶民の少年のところへ身を寄せる。ザックという名の彼は自分よりも相手の気持ちを優先させることのできる優しさを持った人物で、ザックのおかげで自暴自棄になることのなかった葵は一晩でショックから立ち直った。

 冷静さを取り戻した葵が一番初めにしたことは、クレアの素性を確かめることだった。彼女の本当の主人がユアンであることを知ってホッとした葵は、その足でアルヴァの詰問へと向かう。逃げ出さずに葵を迎えたアルヴァの口からは様々な事実が語られたのだが、その中の一つが葵に衝撃を与えた。元の世界へ帰れないとアルヴァに断言された葵は再び冷静さを欠き、ケンカ別れのような形でアルヴァの元を飛び出す。その後はユアンの使用人であるクレアを頼るようになり、ユアンからの連絡を待つ中でザックへの謝意を直接本人に伝えていないことに気がついた葵は彼に会うべくパンテノンの街に向かった。

 葵はザックと、彼の妹であるリズを特別だと思っていた。ザックとリズも葵には好意を向けてくれていたのだが、彼らの態度はマジスターの一人であるキリル=エクランドが余計なことをしたために一変してしまう。ザックとリズに最悪の形で別れを告げられた葵はエリートに対するどうしようもない憤りを夏空にぶつけながら一人寂しく家路についたのだった。






 アルヴァと仲違いをして、ザックとリズという貴重な友人まで失ってしまった葵は学園へも行かず、屋敷にこもって魔法の勉強をするようになった。その相手をしてくれたのがクレアだったのだが、彼女は葵の元でメイドとして働く契約期間が過ぎたと言って突然いなくなってしまう。再び一人暮らしに戻った葵の前に現れたのはユアンで、彼は強引に葵を転居させた。引っ越し先は『ワケアリ荘』というレトロなアパートで、葵は個性的な住人達に囲まれた新生活をスタートさせることとなった。

 ワケアリ荘でクレアと再会した葵は、メイドの時と素顔がだいぶ違う彼女に連れられて、久しぶりにトリニスタン魔法学園に登校した。そこで葵はクレアに無理矢理アルヴァと引き合わせられ、結果的には彼との和解に成功する。葵とアルヴァを仲直りさせたらトリニスタン魔法学園に編入することが出来るという条件をつけられていたクレアはこのことにより、アステルダム分校の正式な生徒となった。

 学校へ通うという日常を取り戻した葵はクレアやマジスターに振り回されながらも比較的平穏な学園生活を送っていた。彼女の周囲では様々な事件が巻き起こっていたものの、幸いなことに葵は渦中の人にはならなかったのだ。しかしクラス対抗戦という非公式な行事の最中、罠に嵌められたクレアを助けるために葵は怪我を負ってしまう。この一件を機にクレアと親しくなった葵はステラ以来となる同性の友人を得た。

 クレアと友達になったのと同時期に、葵はワケアリ荘で懇意にしていたアッシュという青年と付き合うことになった。しかし彼には婚約者がいて、自分がその婚約者ほどアッシュのことを想っていないと気がついた葵は短い期間で彼に別れを告げることになる。この一件によりワケアリ荘にいられなくなってしまった葵はアルヴァの元に身を寄せ、その後はまた以前に住んでいた屋敷での一人暮らしに戻った。

 再度の引っ越しから数日が経過すると夏の終わりがやって来た。次月は学園が休みのため、この機会に見聞を広める旅をしようとアルヴァに提案されていた葵は、待ち合わせのためにトリニスタン魔法学園に出向く。そこで季節の変わり目に行われる儀式を見物した後、葵は待ち合わせ場所である保健室へと向かった。だがその場所ではアルヴァがボロボロになって倒れていて、本来ならば合流してすぐに旅に出る予定だったのが、出発が延期されてしまう。アルヴァには帰っていいと言われたのだがそういうわけにもいかず、葵は役に立たないながらも保健室に泊まりこむことを決めたのだった。






 終夏の儀式の翌日、葵とアルヴァは世界を巡る旅に出た。まずは彼らが暮らしているゼロ大陸(東の大陸)の要所を巡り、アルヴァから色々な説明を受けた葵は夜空に二月が浮かぶ異世界の知識を深めていく。ゼロ大陸での遊覧を終えると、次に向かったのは西のファスト大陸。海を渡ってネイズという国に下り立った葵とアルヴァは一路、ネイズ国の隣国であるフロンティエールへと向かった。

 ファスト大陸での第一の目的地となったフロンティエールは、魔法が使えないという特殊な国である。この国が目的地となったのは、葵がトリニスタン魔法学園でフロンティエールからの留学生であるという偽の立場を有してしまったからだ。そのため現地を知らないのはまずいとアルヴァに言われ、フロンティエールを訪れた。この国で、葵は最愛の芸能人と瓜二つの少年と出会うことになる。海辺で出会ったその少年の名はジノクといい、彼はフロンティエールの王子だった。

 ジノクに導かれてフロンティエールの王宮を訪れた葵とアルヴァは、そこでユアンとレイチェルに再会する。彼らが身分を隠してこの国を訪れていたのは、フロンティエールの秘密を探るためだった。アルヴァがそれに協力することになったため、葵もフロンティエールの王宮に滞在することになる。そうして共に過ごす時間を重ねるうちに葵はジノクに気に入られ、求婚までされることとなった。

 あまりにも突飛なジノクの求婚を断ると、葵は塔に幽閉されてしまった。自力で脱出することが難しい状況に置かれた葵は旅の同行者達が助けに来てくれるのを待つことになったのだが、その時はなかなか訪れない。そのうちに、無理矢理決められた結婚式の前夜となってしまった。そこでようやく、葵に救いの手が差し伸べられる。助けに来てくれたのは姉であるレイチェルに扮装したアルヴァだった。

 アルヴァは女装までして葵を助けに来てくれたものの、フロンティエールが魔法を使うことが出来ない国ということもあり、救出劇は失敗に終わった。だがユアンとレイチェルがうまく立ち回ってくれたため、葵はようやく幽閉状態から解放される。本来であればフロンティエール以外も旅程に入っていたのだが、葵を救出する際にアルヴァが怪我をしてしまったため、葵とアルヴァは「サイアクの旅だった」とお互いに愚痴を言いながらゼロ大陸に帰ることになったのだった。






 ゼロ大陸に戻ってしばらくすると季節が入れ替わり、トリニスタン魔法学園の長期休暇も明けた。学園へ通うという日常に戻った葵は休み明けにいきなり、キリルが自分のことを好きなのだという話を聞かされる。しかし葵は、それをキリルの自発的な感情だと認めなかった。そのためまったくの他人事のように受け流していたのだが、葵を好きだと言って憚らないジノクがトリニスタン魔法学園に編入してきたことにより、事態は混迷を極めていく。

 ジノクとキリルがいがみ合う日々が続く中、葵の初恋の相手であるハルがトリニスタン魔法学園アステルダム分校に帰って来た。しかし彼は葵の知るハルではなくなっていて、見境なく女の子を口説くような人物に成り下がっていた。そんなハルに、以前の彼を知らないクレアが惚れてしまい、二人は出会ったその日に付き合い出す。ハルがアステルダム分校に戻って来た理由も、ステラのことも何も語らなかったため、葵はそれから悶々とした日々を送ることになったのだった。

 本心を認めることが出来ないで人知れず苦悩していた葵はある日、クレアから話があると告げられる。葵自身は過去にハルを好きでいたことを明かしていなかったのだが、誰かに話を聞いたらしいクレアは、そのことを知っていた。話し合いの場で葵は、本心を誤魔化すなとクレアに怒られてしまう。クレアに叱咤されたことで自分の過ちに気付いた葵は、それまで否定し続けてきた本心をジノクに明かすことにした。

 好きな人が他にいるので、付き合えない。葵がそうした本心を明かすと、ジノクは故郷であるフロンティエールに帰って行った。それまで自分に禁じてきた本心を認めた葵は雪降る夜にアステルダム分校のとある場所でハルと出会い、話をすることになる。そこで明かされたのは、ハルの本音。ハルが自分のことをどう思っているのか知った葵は打ちのめされ、一人でいたくないという思いから、保健室を訪れる。そこで、今まで誰にも語れなかった本心を初めて口にした葵はアルヴァに慰めてもらった。

 アルヴァが話を聞いてくれたおかげで、葵は失恋のショックを長引かせることなく気持ちの整理をつけることが出来た。ジノクも郷里に帰ってしまったので、アステルダム分校ではまた、少しだけ周囲が騒がしい、いつもの日常が戻ってくる。そのはずだったのだが、キリルが公衆の面前で爆弾発言をしたことにより、アステルダム分校では再び大騒動が巻き起こることになったのだった。






 オレに惚れろ。キリルが公衆の面前で葵にそう言い放ったことにより、トリニスタン魔法学園アステルダム分校は騒然となった。キリルのこの発言はアステルダム分校の女子生徒の間に荒波を立てていき、ただでさえ嫉妬の標的にされることが多かった葵の立場をどんどん悪化させていく。学園全体で葵と、態度が大きくて女子生徒から疎まれているクレアを追い出そうという空気が高まり、ついには理事長に嘆願書が提出された。

 嘆願書の内容は、あまりうまく魔法を使えない葵とクレアがアステルダム分校の生徒に相応しくないから退学させろというものだった。そんなことはないと証明するため、葵とクレアは特別試験に臨むこととなる。特別試験の内容は生徒同士の魔法対決で、葵とクレアは六日間の特訓の末に試験に臨んだのだが、結果は敗北に終わった。しかしこの試験の合否は勝ち負けで決まるものではなかったため、トリニスタン魔法学園の生徒として充分な実力を有していることを証明した葵とクレアは学園への残留を認められた。

 方々手を尽くしても、葵を退学させることが出来なかった。このことが一部の女子生徒を追いつめる結果となり、彼女達は最後の手段として、葵を拉致監禁するという凶行に出る。それはもう二度と葵を戻らせないという覚悟の上で行われたことで、葵は生命の危機に晒されることになった。しかし、ある人物の助力により、葵は生還を果たす。ここまで事が大きくなってしまったのはキリルとの関係をはっきりさせなかったせいであり、学園に戻った葵はけじめをつけるため、公衆の面前でキリルを振った。

 それまでの葵とキリルの関係は恋人同士でもなければ友人と呼べるものでもなく、キリルの態度も非常に曖昧なものだった。彼は葵に対して執着を見せていても、決して好きだとは言っていなかったのだ。そんな恋愛ゲームのような関係を葵は終わらせようとしたのだが、意識を変えていたのはキリルも同じだった。それまで頑ななまでに自分は葵に惚れてなどいないと言い続けてきた彼は、ここにきてようやく自分の気持ちを認め、葵のことは自分が護ると高らかに宣言する。そうしてまた、葵は渦中の人となってしまったのだった。






 キリルの方が、葵に惚れている。この図式がはっきりしたことで、トリニスタン魔法学園アステルダム分校の生徒達の態度は一変した。不本意ながらもキリルの大切な人という立場を得た葵は、今までとは種類の違った喧騒の中に身を置くこととなる。そんな折、葵はアステルダム分校の図書室でエレナと名乗る少女と出会った。キリルに半ば無理矢理嵌められた(しかも自力では外せない)指輪を取り除いてくれるというので、葵は彼女の家へと赴く。しかしエレナは異世界からの来訪者を狩るハンターで、捕縛された葵は売られることになってしまった。

 召喚獣である葵を買い取ったのは、東の大陸(ゼロ大陸)を治めるスレイバル王国の王女だった。葵はそこで、コレクションとしての暮らしを強いられることとなる。頼みの綱だったアルヴァは無実の罪によって投獄されてしまったが、葵が監禁されていることを知ったユアンとレイチェルが動き出した。王家に近しい存在である彼らが国王に働きかけたことによって、葵はコレクションという立場から解放される。また、レイチェルがユアンの秘密を暴露したため、無実が明らかになったアルヴァも同時に解放された。

 晴れて自由の身となった葵はアルヴァと共に帰還を果たしたのだが、そこでまた、新たな問題が起こった。トリニスタン魔法学園アステルダム分校の保健室で話をしていると突然、アルヴァが消えてしまったのだ。それは目の前から姿が消えたというだけでなく、葵の周囲の人達の記憶からも彼は失われていた。何が起こったのか分からずに困惑した葵は、唯一アルヴァのことを覚えていたユアンに助けを求める。世界にとって特別な存在である彼が葵の説明から導き出した答えは、アルヴァは世界から消されてしまったのだろうというものだった。

 世界から消されてしまったアルヴァを救うため、葵とユアンは二人だけで世界の中心に向かうことになった。しかし世界の中心は、世界にとって特別な存在である『調和を護る者』であっても、おいそれとは立ち入ることが出来ない領域だ。そのため、彼の地へ赴くことの許可を得るところから難航続きだったのだが、葵とユアンはなんとか目的地に辿り着くことが出来た。そこではまた数々の難関が待ち構えていたが、それらを辛くもクリアした葵とユアンはアルヴァを復活させることに成功する。全てが元通りというわけにはいかなかったが、一連の出来事を通じて解決された問題もあったため、葵の穏やかな日常が戻って来た。






 スレイバル王国の王女にコレクションとして扱われていた時、葵はレムという半人半魚の女性と知り合いになった。彼女は召喚魔法を生み出したバラージュ=バーバーという者に召喚されていて、齢千を超える長生きな種族だった。ヴィジトゥール(召喚獣)解放の折に行方が分からなくなっていたのだが、レムと再会を果たした葵は召喚魔法の祖である人物の話を聞くことに成功する。そこで得た情報は、自分と同じ世界から来た者が生まれ育った世界に帰ったという事実だった。

 召喚魔法と対になる送還魔法を完成させるには、バラージュという人物を調べる必要がある。そうした結論に行き着いた葵達はバラージュの痕跡を探しに、クレアの故郷である坩堝島へ行くことになった。そこで葵は、英霊(死した人間の魂が現世に召喚されたもの)となったバラージュと対面を果たす。バラージュを英霊として召喚したのは、トリニスタン魔法学園アステルダム分校のマジスターの一人である、ウィル=ヴィンスだった。彼は葵に、バラージュを呼び出して欲しければ自分と結婚するようにと言う。葵は思い悩んだ末、それで生まれ育った世界に帰れるのならと、ウィルからの申し出を受け入れた。

 生まれ育った世界に帰るために愛のない結婚を受け入れたものの、やはり気持ちがついて行かなかった葵はそれからも思い悩んだ。そしてやって来た、ウィルの両親への結婚報告の日。第三者で唯一、葵がウィルと結婚するつもりだと知っていたハルが、結婚話をなかったことにしてくれた。そのやり方は派手で、ヴィンス家は御家騒動のようになってしまったが、そのおかげでお互いに本当のことを言い合った葵とウィルは和解する。その後、ウィルが英霊の盟約をユアンに譲渡したため、召喚・送還魔法は完璧な形での復元を可能にした。

 送還魔法が完成して喜んでいたのも束の間、葵は異世界にいる友人から衝撃の事実を聞かされた。かつてバラージュに召喚され、再び生まれ育った世界に帰った者が、予測よりも随分と年若い姿で実在しているというのだ。その差異は、送還魔法の不具合から生じたものだった。このままでは生まれ育った世界に帰れたとしても、元いた時点には戻れない。この深刻なタイムラグを何とかする術はないかと、葵は再び東奔西走することになったのだった。






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