それは君と僕のような

『蝶々と蛾は似ているだろう? どうやって見分けるんだと思う?』

 羽の色がキレイなのがチョウ、汚いのがガ。僕はそう答えた。そしたら、その人は首を振って、

『蛾でキレイというのは聞いたことがないけれど、蝶々にだってお世辞にもキレイだとは言えない羽を持っているものもいるんだよ』

 そう言った。

 じゃあ、どうやって見分けるの? 僕がそう聞いたら、

『とまった時、羽を閉じているのが蝶々だよ。蛾は羽を開いたままとまるんだ』

 と言った。

 だから僕は、カベにとまっていた汚い色をしたガとアゲハチョウを捕まえてきて羽をもいでみたんだ。胴体がおんなじようなら、羽を取り替えてみても飛べるんじゃないかと思って。チョウもガも粉が指につくし、たぶんいけるんじゃないかな。

 羽を取り替えるってどんな気分なんだろう。ガは、うれしいよね。キレイな羽をもらえるんだし。チョウは僕をにくむかもしれない。キレイな羽が汚いやつになっちゃうわけだし。

 そろそろボンドも乾いたかな? ほら、飛んでみなよ。

 両手に乗せていたチョウとガを、僕は空へ向けて放った。だけどどっちも飛ばないで、地面に落ちちゃった。

 ……なんか、そうしてるとどっちも毛虫みたいだよ。そういえば、毛虫ってチョウとガのどっちの幼虫でもあるんだよね。

 おんなじようなものでも、やっぱりダメなんだ。君たちも、混じれないんだね。





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